デスロック「LOVE」inジュヌビリエ

東京デスロック「LOVE」の、フランス・ジュヌビリエ国立演劇センター公演に同行しています。

プロダクション全体のレポート等は他の人にまかせることにして、僕は照明の経過だけを書き記します。
これを書いている時点の今日は、5月27日、二日目(楽日)の小屋入り前です。

仕込み日(23日)。このフェスティバル(tjcc)では、僕たちともう1カンパニーとで一つの劇場(プラトー2)を共有するので、その二つの仕込みを合わせた照明を、この日の内に仕込む。仕込みは劇場のスタッフが全てやるので、僕らは観光にでもどうぞ、と言われた。しかし2カンパニー分とは言っても、両方で100台ぐらいの仕込み。僕らの感覚では、朝からやれば、まあ普通に行って午後ぐらい、遅くとも夕食ぐらいまでには、吊り込み、回路とり、色入れ、パッチぐらいは終わる量である。だから「夕方ぐらいまでに仕込みができたら、僕たちの分だけでもフォーカスを少しやってみないか?」と提案してみたら「仕込みは夕方には出来上がらない。フォーカスは明日」とあっさり拒否された。チャンネル表を渡してパッチだけでもやってもらおうと思ったが、それも拒否された。しかたないのでその日は彼らにまかせることにする。

翌日(24日)、フォーカス&舞台稽古の日。朝行ってみると、吊り込みはさすがに出来ていたが、フィルターやGOBOが入っていない。フォーカスの時に入れれば良いということなのだろうか。

ディマー番号の入った図面を渡され、チャンネル番号を書き入れるように求められたので、書く。それに基づいてパッチ。

僕の仕込みは、舞台上部の仕込みはすべてキャットウォークにした。なぜなら、キャットウォークなら上に上ってフォーカスできると思ったからだ。しかしフォーカスはジニータワーじゃないと出来ないという。まあたしかに、バトンがキャットウォークの踏みづらより低いので、やりにくいことはわかるが、どうなんだろう。(あとで直し作業のために自分でキャットウォークに上がって見たら、たしかに通常よりはちょっときついものの、上からぜんぜんフォーカス可能であった)

さて、用意されたフィルターとGOBOを見るとGOBOが2枚しか見あたらない。GOBOは8枚使うよう図面上で指定してある。「あと6枚はどこにある?」と尋ねると、「8枚必要なことを自分も今知った」「この劇場には2枚しか無く、注文すると三週間かかり、それでは間に合わないので注文しなかった」とか言ってる。冗談きつい。こちとら図面は二週間以上前に送って「問題ないか?」と尋ねて「問題ない」という返事をもらっているのである。どう考えても彼らの手配ミスである。僕が「事前にわかってれば日本から持ってくることもできたのに、なぜ言ってくれなかったのか」と尋ねると、「僕は知らなかったのでわからない」「10時半にボスが来るので聞いてみるが、話が行き違った理由は彼もたぶんわからないと思う」とか、のらりくらりと答えやがる。「8枚無いと困る」と言っても、「実際解決方法が無い」「注文すると三週間かかる」「最悪、僕が勤めている他の劇場から借りることはできるかも知れないが、確証はないし、今日中は無理だ」などと言う眠たい返答。さっきから言ってる内容が一貫していないので、明らかに「いいわけ」である。この場だけを切り抜けようとする態度がありありで、誠意というものが全く感じられない。しかし要するに、結論としてはこの場には2枚しか無く、それしか使えないということだ。しかたないので6台をカット、GOBOの仕込みは2台のみとすることにした。

ジニーでのシュートが終わったら、床のリノを敷いて、SSを置くという手順なのだが、リノを敷くのもスタンドを置くのも回路を取るのも、実にちんたらちんたら作業しやがる

SS用のスタンドの高さだって、図面できちんと指定してあるのに、その範囲を超える高さのスタンドが用意されている。「床ぎらい」で使うので、これではちょっと高過ぎだ。スタンドはこれしかないのかと尋ねると「無い」と即答。じゃあブースにあるあの低いスタンドは何なんだよ、と、尋ねるのもめんどくさい。敵はこのように、こちらのやる気をそぐような対応を重ねてくる。本当に気分が滅入る。パッチとシュートだけなら午前中で楽勝と前日の段階では思っていたが、フォーカスが終わって実際に舞台稽古に入れたのは16時ごろだったか。

その翌日(25日)。別カンパニーに劇場を明け渡さなければならないことは知っていたが、それがどのレベルのものなのか事前に説明が無かった。どうなんだろうと思って劇場に行って、中をのぞいてみると、昨日フォーカスしたステージの仕込み全てが、僕に相談無く勝手にぜんぶ撤去されていた。

その翌日(26日)。僕たちの初日、劇場スタッフが舞台と照明の復帰作業を朝10時から開始するという。10時過ぎに僕も一応来てみると、まず、10時に仕事が始まってない。全員そろってない。10時半ぐらいからちんたらちんたら仕事しやがって、ステージ回路もバラす時に何も考えずにただバラしちゃってるから、もっかい仕込んでもう一度回路を送りながら「どれが何番」とかやってる。効率が悪いことこの上ない。「何か手伝えることはないか」と申し出てみると「今こちらで集中してやってるのでコーヒーでも飲んでてくれ」だと。僕は、このペースにつきあってたんじゃ絶対間に合わないと思ったので、パッチ作業に無理矢理介入することを決断。通訳さんをブースに連れてきて、「この図面に書かれた番号を順に読み上げてあげて下さい。まずこの番号を言って、つぎに隣のこの番号」と指示し、パッチを仕切る。

フォーカスもこいつらと一緒にやってたんじゃ、とてもじゃないけど間に合わないと思ったので、Doctor-MX+無線LANルーター+VNC+iPhoneでワイヤレスのリモコンを構築。iPhoneで照明がつくことに仰天している劇場スタッフをシカトしながら、一人でiPhoneでフェーダーを上げながら一人でステージのフォーカスを進める。だってそうしないと間に合わないもん。すると劇場スタッフが「僕はここにいる必要があるか?」とか尋ねやがる。内心むかつきながら「フォーカスが終わるまでは念のためいてください」と答える。当たり前だろ。ようやく、稽古開始予定の13時の、10分前にフォーカス完了。ぎりぎりです。もちろん僕は昼食抜きでそのまま舞台稽古に突入。その日は15時半ゲネ、19時半と23時に本番。

23時の本番終了直後、「明日も、もう1つのカンパニーが劇場を使うので、今朝と同じ状態に、ステージ仕込みをバラさなければならない」と、いきなり言われる。聞いてねえよ。翌日にもう一つのカンパニーの「稽古」で劇場を使うというのは、たしかにスケジュール表には書いてある。しかし、初日が開いた後、仕込んであるものをもっかいバラさなきゃならないとは聞いてない。「だったら、抜くコネクタに合い番ふっとくなりして、今朝みたいにイチから回路を探る必要の無いようにしてくれ」と言うと、「僕も今朝はそのことに気づいていた。昨日は僕じゃない者がバラしたのでうまくいかなかった。明日は僕が自分でバラすので大丈夫」という言いぐさ。こいつは要するに何かあると「自分は悪くない」ということしか言わない。言いわけばっかりの対応に、ついに僕もキレて、「あとさ、こういうことが事前にわかってたんならさっきの長い空き時間にコロガシの置き位置をバミるとか、やれることはたくさんあったんだから、そういうことは早く言って欲しいんだよな」と怒り顔で言い放った。すると「もう1つのカンパニーはここが初日で大変で、作品がすでに完成している君たちとは状況が違うのでなるべく優先してあげたい」とか「明日どれくらいのリハーサルが必要かがなかなかわからなかったので」とかゴチャゴチャ言うので、「要するに今決まったってことだろ?」と言うと、「いや、明日の昼間は劇場を空けてもらうことはスケジュール通りだ」という。あと「もうバスが出るので帰らないといけない」とか言う。コイツとここでこれ以上会話を続けると不愉快が増すばかりだと思ったので、「事情はわかった。明日は5時に来るからよろしく」と引き下がった。

以上が昨日まで。


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