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6.吊り込み〜シュート


青年団では、劇場に入ったら、一番最初に照明を吊ります。青年団の場合、舞台装置はほとんど正確に図面通り仕上がりますので、仕込図にしたがって照明を吊れば間違いありません。照明は主に舞台上部に仕込むので、舞台上に何もない、劇場入り直後の状態が照明吊り込みに最も適しているのです。まず、ひたすら仕込図に忠実に照明器具を吊り、回路をとり(照明の配線を行うことを「回路をとる」といいます)、色(#B-3)を入れます。以上の作業が終了したら、直ちに舞台を大道具に明け渡します。この段階では照明の方向をある程度合わせるようなことはしません。青年団の照明はアタリ(ライトの向き)が極めて厳密で細かいので、舞台装置が完成してからシュートしないと意味がないのです。ですから、最初の吊り込みの段階ではライトの向きはデタラメです。

舞台装置が完成するまでの間、パッチを組みます。パッチとは、ライトと調光フェーダーとの対応付けのことです。一本のフェーダーでコントロールするライトは多くても4台位、通常は2台程度です。同じ様な扱いのライトでもできるだけバラバラのフェーダーにすることで、細かい明るさの変化をつけられますし、ライトの個体差による明るさの違いもカバーすることができます。

舞台装置が完成したらシュート(ライトの方向決め)に入ります。一般に、照明のシュートをする方法は、シュート竿、タワー、脚立などがありますが、私の場合は竿は使用しません。ライト一台一台はどれもあたる範囲が直径1〜2m程度で方向も厳密に規定されていて、言うなれば全部がサスのようなもんですから、竿では逆に時間がかかってしまうのです。ですからシュートは必ず、灯体を直接手で動かす方法(タワー、脚立)を使用します。バトンが昇降可能で、かつタワーや脚立によるシュートが不可能な会場の場合(例えば湘南台文化センター=神奈川県藤沢市=など)、シュートはいちいちバトンを降ろして行います。

シュートは一台ずつ順番に丁寧に行います。会場の規模にもよりますが、シュートはだいたい1時間くらいかかります。シュートが終わったら、空の(役者がいない)舞台で、あらかじめ机上で想定したバランスで全ライトを点灯してみます。現場で最も興奮する瞬間です。ここで全体的に見てバランスの悪いところがあれば(普通はほとんどありません)シュートし直します。

あと、細かい明るさのバランスをとる(ゲージをとる)作業が残っているわけですが、これはこの時点では行いません。ゲージとりは役者が舞台稽古をしているときに行います。昔はスタッフを舞台に立たせたりしてある程度のバランスを作っていたんですが、それだと、本物の役者とは顔も身長も姿勢も動きも違いますから、あまり意味がないのです。ですから、シュートが完了した時点で舞台を演出に渡して、舞台稽古に入ってもらいます。


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