HOMEへ
目次へ

千代田区の禁煙条例

たばこと行政に関する話題
2002.11.21

東京都千代田区で、路上を禁煙にする条例(正式には、「安全で快適な千代田区の生活環境の整備に関する条例」)が施行されたそうである。例によって、喫煙者は反発したり泣き寝入りしたり、嫌煙者は賞賛したり増長したりと、まあそれはそれで勝手にやっていただくぶんにはかまわないが、喫煙VS嫌煙という伝統的構造にガッチリはまった形の議論にほとんど終始しているのは、ちょっと残念な気がする。

なお、私自身のたばこに対する考えは「喫煙者を救え」を参照されたい。

そもそも、千代田区がなぜこのような条例を作ったのか。区民の要望? 違反した喫煙者からの罰金としての増収? それもあろう。しかし、条例や法律が新たに導入される際に、まずその理由として疑うべきなのは、「これを利用して誰かが商売していないか?」という点である。今回で言うと、千代田区ではこの条例を根拠として道路に禁煙マークが描かれたり、違反者がいないか巡回する監視員が出動したりしているらしい。道路にマークを描くのはお金がかかる。巡視員には人件費がかかる。その予算はどこから来るか? 当然、千代田区の区民税=税金である。

この不景気の世の中、一般消費者がなかなかモノを買ってくれなくて企業は困っているわけだが、その状況の中、確実にお金を払ってくれているのは、行政である。一般消費者はモノは買わないくせに、税金だけはきちんと払っている。だから行政だけは安定して資金を持っている。だから、このご時世、行政相手にうまく商売したものが勝ちであることは間違いない。要するに、税金をいかに「正当に」消費させるか、ということが企業としての勝負となるのだ。その意味で、環境保護や禁煙といったことは、いかにも「正当くさい」。そういった「正当くさい」ことには税金を使ってもあまり反感を買わないから、予算化しやすいということが言える。

さて、ではこの条例のカラクリはどうなっているのか。証拠がないので断言はできないが、この条例が成立した経緯の予想をすることぐらいはかまわないであろう。おそらく、仕事が欲しい企業(道路に禁煙マークを描く会社か、巡視員を派遣している会社か、その他か、その全部が協力してかはわからない)が、千代田区の行政あるいは区議会議員にエサを与えて(天下り先の確保、政治献金等)お願いし、条例を作ってもらったのではないだろうか。そう考えるのが辻褄が合うように私には思える。この条例は、施行されれば喫煙VS嫌煙の議論の大合唱になることが確実で、利権構造を隠すにはもってこいである。

だいたい、区民の健康とか環境とか、そんな一円のお金にもならないことのために、自ら反感を買うような行動をする役人や議員が、いるわけないとは思わないか。他人のために自分を犠牲にするような精神性を持っているのは、一般庶民だけである。

私の結論:ケンカを見物しながら利益を得ている連中がいる。


目次へ
HOMEへ

岩城 保(Tamotsu Iwaki)
iwaki@letre.co.jp