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テロとアメリカの報復

世論操作の話題
2001.10.9

今回のトピックはあくまで私個人の見解である。もちろんこの見解は私なりに調べた結果に基づいてのものなので、誤ってはいないと思うが、推論のみで証拠のない見解も含んでいる。誤解を避けるため、私のこの文を引用して、公共性のある場での議論や主張の証拠資料に使用することは、できれば避けていただきたい(リンクはかまわない)。これは権利の主張ではなく、あくまで「お願い」である。

昨日、アメリカ軍とイギリス軍がアフガニスタンへの攻撃を開始した。この件についての報道や世間での話題のされ方について、私は非常に違和感を感じている。

例えば、下記のような記述を読んで、どうお思いになるだろうか。はじめにことわっておくが、下記の記述は明らかな事実誤認も含んでおり、誤っている。

イスラム原理主義勢力のタリバンがアフガニスタンを支配しており、そのタリバンの中心人物にオサマ・ビンラディンがいる。今回のアメリカ同時多発テロはビンラディンの指揮により行われた。ビンラディンおよびタリバンは、アメリカをはじめとするキリスト教諸国の世界進出に抵抗しているという意味で、ある程度イスラム社会では支持する人もいるが、その執政内容は非常に高圧的・暴力的であり、宗教弾圧や女性差別なども行われている。アメリカは、同時多発テロへの報復として、アフガニスタンを支配しているタリバンおよびビンラディンを攻撃しているが、このような悪政をしいているタリバンを攻撃することは、単に報復としての意味にとどまらず、アフガニスタン国民にとっても国際社会にとってもメリットとなる。
最初に述べたように、上記の記述は誤りを含んでいる。しかしながら、私が恐れるのは、日本人の大部分が上記のような単純で誤った認識をしているのではないか、ということである。

このテロおよびアフガニスタンの件については、情報が非常に単純化されて流布されており、それが非常に問題だと私は思っている。大衆は複雑な洞察よりも単純な選択肢を好む。アメリカ側はそのことを利用して、問題を単純化させることにより大衆を味方につけようとしている。それは下記のブッシュ大統領の言葉に象徴される。

世界各国は我々に味方するかテロリストに味方するか(with us, or with the terrorists)決定しなければならない

これは、二つの選択肢を提示して、あたかもその二つが対立概念であるかのように見せかける手法である。この大統領の演説を聞くと、つい、今回の件は「アメリカVSテロ」の戦いだ、と思ってしまう。アメリカはそれを狙っている。実に見事な世論操作である。そして日本のほとんど全部の報道機関は、このアメリカの思惑(=日本政府の思惑)に沿って今回の件の報道をしている。

日本の報道だけから情報を組み立てると、今回の事件は、

ということになる。しかし、世界唯一の超大国アメリカが、「仕返し」なんて感情的な理由で戦争をするものだろうか。戦争とは、建物を爆薬で破壊し、人を殺傷するという、かなり無茶な行為である。それが果たして、普段は平和と繁栄を享受している豊かな国の、その中の富裕な人たちが、感情的な理由でやることであろうか。それよりももっと説得力のあるそれっぽい理由を探すべきではないだろうか。

報道にはあまり出てこないことだが、アフガニスタンというのは実はエネルギー資源戦略上の重要拠点である。世界のエネルギーはこれまで、中東の石油資源に大きく依存していたが、近年、カスピ海周辺に莫大なエネルギー資源が埋蔵されていることがわかってきたそうである。資源保有国の中に、トルクメニスタンという国がある。トルクメニスタンはカスピ海とアフガニスタンの間に位置する。トルクメニスタンは天然ガスを埋蔵しているのだが、それをアフガニスタン経由でパキスタンに運ぶパイプラインを建設する、という計画がある。このパイプラインの建設に関しては、莫大な権益が絡む。

そもそも、アメリカがタリバンを敵視するようになったのは今に始まったことではないし、もともとアメリカは、エネルギー資源の権益のために、アフガニスタンを支配下に置きたいのである。支配といっても別にアメリカ合衆国の51番目の州にする必要はない。見かけ上は独立を保たせたままで、アメリカに迎合する政府を作れば十分である。それは例えば、極東の軍事拠点として重要な日本に、アメリカに迎合する政府を作り、基地の提供などをさせているのと基本的に同じ手法である。なお、1979年にソ連がアフガニスタンに侵攻したのも、おそらく同じ、経済的な理由だと思う。

今回の報道の中で上述のような経済的なメリット・デメリットが登場しないのは明らかに不自然であると私は思う。アメリカでの同時多発テロの真相はわからないが、テロの犯人がビンラディンで、それをかくまっているのがアフガニスタンのタリバンだから、アフガニスタンを攻撃する、なんていう、単純な話ではないことは確かだと思う。

カスピ海周辺のエネルギー権益を確保する目的で、アフガニスタンを攻撃して軍事占領する口実を作るため、ビンラディンの犯行に見せかけて、CIAがアメリカで同時多発テロを演出した、のかも知れない、と妄想するぐらいの想像力は持ちたいものである。CIAがやったというのはいくらなんでも妄想が過ぎるとしても、テロが起きることを事前に察知したが見逃した、ぐらいのことは、本当にあり得るかも知れない。1941年の真珠湾攻撃も、アメリカはわかっていてやらせたといわれているから、それぐらいの陰謀じみたことはあり得るのではないだろうか。少なくとも、「テロへの報復」などという子供じみた理由よりは説得力がある、と私は思う。

私の結論:この戦争は「テロとの戦争」ではない。
参考サイト
「誰が真犯人なのか!真珠湾を越える真珠湾」
アフガニスタン - 縛られた手の祈り
ディフェンス・ゼミ カスピ海周辺諸国のエネルギー資源を巡る最近の動向について
等。
(上記各サイトは2001年10月現在です。その後移動あるいは消滅している可能性があります。ご了承ください。)


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岩城 保(Tamotsu Iwaki)
iwaki@letre.co.jp