Doctor-MX(2) チェイスの扱い方

前回は、外部卓のフェーダーをサブマスター(シーンマスター)として使う方法を紹介したが、今回は、外部卓のフェーダーをチェイスのマスターにする方法をご紹介する。

Doctor-MXのチェイスはちょっとクセがあるので慣れないと使いづらい。本題に入る前に、念のためDoctor-MXの「チェイサー」の使い方をおさらいしておこう。

たとえば ch.11~13が点滅するチェイスを作るとしよう。「チェイサー」のウィンドウを開いたら、メニューから編集(E)→チェイスを作成(E)で一組のチェイスを作成する。この新しいチェイスにはまだ「ステップ」が一つも無いので、「コンソール」で1ステップ目(つまり ch.11だけが上がってる)を作り、その「コンソール」ウィンドウのフェーダー部分をドラッグして(フェーダーとフェーダーの間の部分をつかむ)、「チェイサー」ウィンドウ内の右の「ステップ」の所に落とす。これでステップが一つできた。同様に、 ch.12が上がった状態の「コンソール」から「チェイサー」ウィンドウのステップの所にドラッグして2ステップ目を作成。同じように ch.13が上がった状態の「コンソール」から「チェイサー」のステップの所にドラッグ。これで3ステップのチェイスが完成した。

Doctor-MXのチェイスはスタート/ストップが無く、ON/OFFも無い。なのでこのままだとこのチェイスは生きっぱなしである。チェイスを止めるためには、もう一つチェイスが必要である。そこで同じ「チェイサー」ウィンドウでもう一度、編集(E)→チェイスを作成(E)で新しいチェイスを作る。この新しいほうのチェイスには「ステップ」は作らない。ダミーのチェイスである。こうしておくことで、最初に作ったチェイスをクリックすればチェイススタート、ステップ無しのほうのチェイスをクリックすればチェイスストップ&OFFということになる。フェードイン・フェードアウトの数字を入れれば、チェイスのフェードイン/アウトも一応、できる。

チェイスを作る方法は、以上の方法が最も簡単である(と僕は考えている。もっと簡単な方法をご存知の方がいらっしゃいましたらご教示いただけますと幸いです)。で、チェイスを「作る」のはこれが簡単だが、舞台の本番で「操作する」ということを考えた場合、この方法では扱いづらい。特に、僕のようにいくつものチェイスを取っ替え引っ替えIN/OUTするようなスタイルの場合、きっかけのたびにPC画面上で操作をするのは、ちょっときつい。やはり、外部卓のフェーダーが、チェイスのマスターになるようにしたいところである。その方法を以下に説明する。

ちなみにDoctor-MXの「チェイサー」には、チェイサー(C)→チェイスミックスモード(M)というのがあり、これでも「チェイスのマスター」的な動きにならないこともないが、この機能は、Doctor-MXをごくごく簡易な(チェイス一つだけみたいな)方法で使う時のためのもので、僕たちが今やろうとしているような、シーンがいくつもあるような普通の舞台の現場では使い物にならない。なぜなら、チェイスミックスモードは「流れ図」上での、その「チェイサー」より上にある信号をスルーできないからである。また、コントロールするチャンネルも、「1~」に固定されている。

本題に戻る。では例として、外部卓の12番フェーダーが、「ch.11~13のチェイス」の、マスターとなるようにしてみよう。前回説明したように、外部卓の12番フェーダーは、「コンソール #12」のマスターになっているのであった。復習すると、「流れ図」の一番上に置いた「パッチ」によって、12番フェーダーは ch.512に飛ばされ、いっぽうで、「コンソール #12」のマスターが ch.512に設定されているのであった。その設定はそのままで良い。

作ろうとしているチェイスは、ch.11~13のチェイスだが、仮に「チェイサー #1」だとして、「チェイサー #1」ウィンドウでチェイスを作成する際、実際に点滅させようとしているチャンネル(ch.11~13)を使わず、ディマーがつながっていない遠いチャンネル、例えば ch.401~403が点滅するように作る。つまり、ステップ1=ch.401がON、ステップ2=ch.402がON、ステップ3=ch.403がON、というチェイスを作るのである。その「チェイサー #1」を、「流れ図」で「コンソール #12」のすぐ上に置く。次に、新しいパッチ(仮に「パッチ #2」としよう)を作成し、[401→11]、[402→12]、[403→13]だけのパッチをする(他のチャンネルはそのままスルー)。ここで注意すべき点は、[11→11][12→12][13→13]のパッチを切断しないことである。つまり入力側の11と401の二つが、出力側の11につながれた状態にするということである。この「パッチ #2」を、「コンソール #12」のすぐ下に置く。これで、「チェイサー #1」によって ch.11~13が点滅するようになった。

「コンソール #12」は、「チェイサー #1」と「パッチ #2」にはさまれた状態になっている。その「コンソール #12」で、ch.401~403のフェーダーをフルに上げ、これら3チャンネルの「チャンネル動作」を「アッテネート(att)」にする(フェーダーの上にある四角をクリックすると選べる)。これで、「チェイサー #1」の出力を、「コンソール #12」でブロックできるようになった。これで完成である。「コンソール #12」のマスターが下がっていると、ch.401~403が attで押さえられるので、その下の「パッチ #2」に ch.401~403の信号が行かない。つまり、「コンソール #12」のマスターが「チェイサー #1」のマスターとして機能する。

以上が、外部卓の12番フェーダーを ch.11~13のチェイスのマスターとして機能させる方法である。手間がかかるように思えるかも知れないが、これより良い方法は、おそらく無い。上記のようにすれば、ch.11~13は、チェイスで点滅させることができる上に、他のコンソール(#1~#11)でシーンの中に単に含めることもできる。普通のチャンネルとしても使えるし、チェイスさせることもできる、それを両立させるために、遠いチャンネル(ch.401~403)を使用するのである。


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