年は変わりましたが

1月1日に韓国から帰国しまして、新年の挨拶もする間もなく、昨日2日はガレキの太鼓「吐くほどに眠る」の通し稽古、その一回の稽古だけを元に、夜中まで照明プラン作成、そして今日は仕込みです。初日は6日。その間に「革命日記」の準備を進め、9日には韓国に渡ります。年初から飛ばしてます。

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2011年の仕事

現在、ソウルに滞在しています。今年最後の現場「再/生」韓国版の公演中です。公演は12月31日までで、1月1日に帰国します。

年末の恒例により、2011年の照明プランをリストします。

1.三条会「冬物語」@ザ・スズナリ(1月)
2.デスロック「WALTZMACBETH」@いわきアリオス(1月)
3.美浜文化ホール「美しき浜辺の妖精たち」@美浜文化ホール(2月)
4.サラダボール+ナノグラフィカ「母アンナの子連れ従軍記」@長野蔵春閣(2月)
5.ロボット「さようなら」「働く私」二本立て@KAAT(2月)
6.デスロック+いわき総合「平成二十三年のシェイクスピア」@富士見(2月)
7.サラダボール「母アンナの子連れ従軍記(東京版)」@春風舎(3月)
8.キラリかげき団「白墨の輪」@富士見(3月)
9.ブライアリー企画「川と出会い」@春風舎(4月)
10.青年団「平田オリザ演劇展」@アゴラ(4~5月)
11.高山広「おキモチ作戦『劇励』」@目黒パーシモン(5月)
12.デスロック「LOVE」@フランス・ジュヌビリエ(5月)
13.ガレキの太鼓「いないいない」@春風舎(6月)*プランのみ
14.二騎の会「四番倉庫」@アゴラ(6月)
15.青年団「革命日記」@福岡ぽんプラザ(6月)*プランのみ
16.青年団「革命日記」@四国学院大ノトス(6月)*プランのみ
17.青年団「革命日記」@伊丹AI・HALL(6月)*プランのみ
18.ロボット「さようなら」「働く私」@山口YCAM(6月)
19.高山広「おキモチ作戦『劇励』」@絵空箱(6月)
20.青年団「東京ノート」@イタリア・ナポリ(6~7月)
21.青年団「東京ノート」@イタリア・サンタルカンジェロ(7月)
22.デスロック「再/生」@横浜STスポット(7月)
23.ロボット「さようなら」@沖縄キジムナーフェス(7月)
24.フランス版「銀河鉄道の夜」@沖縄キジムナーフェス(7月)*プランアレンジのみ
25.ロボット「さようなら」@札幌cubegarden(7月)*プランのみ
26.デスロック「再/生」@京都KAIKA(8月)
27.ロボット「さようなら」@阪大懐徳堂(8月)
28.デスロック「再/生」@袋井(8月)
29.ロボット「さようなら」「働く私」@大阪ABCホール(8月)*プランのみ
30.ロボット「さようなら」@オーストリア・リンツ(8~9月)
31.ロボット「さようなら」@ドイツ・ベルリン(9月)
32.青年団「東京ノート」@中国・済南(9月)
33.ロボット「さようなら」@鳥の劇場(議場劇場)(9月)
34.ロボット「さようなら」@京都芸術センター(9~10月)
35.青年団「ヤルタ会談」@阪大懐徳堂(10月)
36.青年団「ヤルタ会談」@川崎アートセンター(10月)
37.キラリふじみ「あなた自身のためのレッスン」@富士見(10月)
38.青年団「ソウル市民五部作」@吉祥寺シアター(10~12月)
39.高山広「おキモチ作戦『劇励』」@絵空箱(11月)
40.ロボット「さようなら」@国際交流基金(12月)
41.青年団「サンタクロース会議」@伊丹AI・HALL(12月)
42.青年団「サンタクロース会議」@四国学院大ノトス(12月)
43.青年団「サンタクロース会議」@熊本芸術劇場大会議室(12月)
44.青年団「サンタクロース会議」@富士見(12月)*プランのみ
45.デスロック+第12言語演劇スタジオ「再/生」@韓国ソウル(12月)

以上、45本でした。
目標の50本に、もう少しで届くところでした。まずまず、よく働いたと思います。

しかし、今年は、3月の震災と、それに続いて「節電禍」と言いたくなるようなこともありまして、精神的には非常につらい年となりました。そして、来年も、僕にとっては、明るい年になる見通しはまったくありません。この国が「坂道を転がり落ちるよう」に崩壊していく姿を前にして、自分には何ができるのか、自分はどうしたら良いのか、悩むばかりです。

しかし、少なくともそこから逃げるのではなく、どうにか知恵を働かせて、この厄災の中を、どうにか力強く生き抜いていきたいと思っています。

今年も皆様お世話になりました。来年もよろしくお願いします。


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忙しくなります

ソウル市民五部作は、僕は最初の約一週間で明かりを作ったあとは、本番操作を別の者にまかせ、僕自身は本番には関わっていませんでした。その間は、高山広さんの公演があった他、次の公演「サンタクロース会議」の準備などをやっていました。

今日(12月5日)は、「さようなら」非公開公演の仕込みです。なんと、今日から来年の元日まで、28日間連続現場です(移動だけの日とかもありますが)。今日明日の「さようなら」を終えたら、翌日から「サンタクロース会議」の西日本ツアー。その帰った翌日に、デスロック「再/生」韓国バージョンをやりにソウルに渡ります。

元日に帰国しますが、その翌々日からアゴラに小屋入り、ガレキの太鼓の照明プランを作ります。その後すぐ「革命日記」の韓国公演でまたソウルに渡ります。

いつもこれぐらい忙しいと助かるんですけどね。


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もうすぐ高山広さんの一人芝居

ソウル市民五部作の上演が続いています。ソウル市民五部作、僕は「照明」ですが、正確に言うと、僕は照明のデザインのみで、本番のオペレーションは別の者にまかせています。光の向きやバランス、変化のスピード、タイミングなどをリハーサルの時点で僕が決めて、本番時は、オペレーターは決まった「きっかけ」(特定の台詞、あるいは特定の俳優の動き)に合わせて、照明卓の[GO]ボタンとぽちっと押すだけでオペレーションが出来るようになっています。
もちろん、毎日劇場に行った時点で卓の電源立ち上げ、全ライトのチェックなどを行ないますので、そこんところは専門家じゃないとできないんですが、開場してから終演するまでの「本番」に相当する部分の操作は、専門知識はまったくいりません。作品を1~2度見たあとなら、これを読んでるあなたにも出来ます。

なので、公演によっては、この本番のオペレーションを、(今回は違いますが)出演していない俳優に頼むケースもあります。俳優でももちろん操作自体は出来ます。ぽちっとボタンを押すだけですから。ただ、以前、一度、俳優がオペレーションをミスったことがありました。聞いてみたら、「演技にみとれてしまって」ボタンを押すのを忘れてたっていうんですね。だから、あまりに演劇が好きな人は、オペレーションには向いてないのかも知れません。

そういったわけで、この本番期間中、僕はソウル市民五部作においては、まったくやることがないわけです。で、何をしているかというと、次の仕事の準備を進めています。一番近いの12月の『サンタクロース会議』のツアー(伊丹・香川・熊本・富士見)ですね。これのプランが、ようやく昨日できました。あと、来週の月火=11月28日(月)と29日(火)の二日間、親友の高山広さんの一人芝居の照明をやります。

こちらは、コンピュータメモリなど一切使わず、僕がこの手でフェーダーを上げ下げしてオペレーションします。といっても機材の台数はソウル五部作の5分の1ぐらいですが。芝居の中身は、とても面白いです。「一人芝居」というのは、たいていがつまらないか、とっつきにくいものが多いですが、高山さんは違います。面白いです。イッセー尾形さんに似てるという人もいますが、僕はイッセー尾形さんはほとんど見たことないのでわかりません。

よろしかったら、ぜひ、お越し下さい。

高山広ショー店◇高山広一人芝居
おキモチ作戦 OPERATION OKIMOCHI『劇励』第8弾


日時:11月28日(月)、29日(火)
   両日とも、開場18:30 開演19:30

前売・予約:2,500円(+1ドリンク代 700円)
当日:3,000円(+1ドリンク代 700円)

開場:絵空箱 http://www.esorabako.com
*東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅下車徒歩2分、東西線「神楽坂」からも歩けます

チケットご予約・お問い合わせ:operation_okimochi@yahoo.co.jp



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「あなた自身のためのレッスン」の照明が出来るまで

先週で「あなた自身のためのレッスン」は終わり、今週からは「ソウル市民」五部作の現場に入っています。

「あなた自身のためのレッスン」は、本当に難産でした。多田淳之介演出の新しい作品は、いつも初日ギリギリまで攻防が続くのですが、今回もかなり大変でした。初日が無事に開いた時は、本当に嬉しかったです。

小屋入りから初日までの出来事を書き記します。記憶で書いているので、多少時間的なずれなどあるかも知れませんが、大きくは外れていないと思います。

10月12日
仕込み日。
「あなた自身のためのレッスン」小屋入り。一応プランは書いたのだが、まったく自信はない。というのも、戯曲が難しく、通しを見てもなんだかよくわからないし、演出意図もまだつかみ切れていない状態で作ったプランだからだ。そのような状態でどうやってプランするかというと、「なるべく色々できる」ようなプランを考える。僕が考えたのは、(例によって)三原色の地明かり、それと、1台ずつ単独で使えるように回路わけした9台の白色の地明かり、前中奥&内外に回路分けしたナナメ、前中奥に分けたシーリング、木漏れ日、SS、といったものである。どれをどのシーンで使うかなどは、まったく決まっていない。とりあえず、これを仕込んだ。この日は出演者はお休みなので、仕込みだけで終了。

10月13日
舞台稽古初日。
昼から舞台稽古。照明の大まかな方針を決めるため、とりあえず頭から最後までざっと明かり合わせをさせてほしいとお願いし、一応最初から最後まで明かりを作ってみる。オープニングは良い。ボーダー&客電(既設客席の)。客席にあたっていたボーダーライトのタッパを飛ばすと、一部が文字幕の影になり、客席が暗くなる、という僕の案も採用された。そこまでは良い。

しかし、ボーダーが消えて以降が、どうもうまくいかない。特にひどいのは9台の白色地明かり。どのシーンでもつけられない。二幕(大量の家具がばらまかれる)も、どうもうまくいかない。ナナメとシーリングでとりあえず顔をとるにしても、なんとも明かりがぼけている。しかし、どう直せば良いのかがわからない。しかし、プランが間違っているということだけはわかる。だって、上げられないフェーダーが多すぎる。あれをつけてもこれをつけても、「シーンに合わない光」ばかりつく。とにかく、ダメプランであることは確かだ。失意の内に帰宅。帰路、電車の中で、ぼんやりと問題点が見えてくる。

「地明かりをつけられなかったのは、エリアが区切られるからだ。舞台美術も、演出も、エリアを切るということをやっていない。俺一人だけ、違うことをやっている、だからダメなんだ」

そこに気づいたら、改善案が次々と浮かんできた。地明かりはやめて、テーブルやタンスなどのサスみたくする。ナナメの台数を減らし、その分の機材と回路を使ってアンバーとライトブルーのポチを作る。ナナメとシーリングは、アクティングエリアをきちんと意識し、余計なところにあたらないように絞る。など。

10月14日
手直しを予定していた日。
午前中、昨晩思いついた案に基づいて手直し作業。この日だけは手直し要員を2名確保してある。中でも、地明かり9台をどうやって「サスっぽく」するかが難しいところだが、はっきりしている「テーブル」や「タンス」はサスにし、残りは、なんとなくアクティングエリアに使われる部分を中心に、とりあえずエリアっぽい感じにする。

午後から舞台稽古。頭から。ナナメとシーリングは、アクティングエリアを意識して絞り込んだので、まずまず使いやすくはなった。サスっぽく変更された元の地明かりや新しく作ったポチは、一幕では使わない。一幕は大きな問題は無いようだ。この日の稽古は一幕までで時間切れ。しかし、照明の問題は主に二幕だ。

10月15日
午前中は川崎の「ヤルタ会談」の仕込み。

午後から富士見に戻って舞台稽古。いよいよ二幕である。地明かりを「サスっぽく」したものや、ポチも使ってみたところ、感触は良い。まだプランの輪郭がぼやけているが、方向性としては正解だったようである。

演出家が、突然、置き道具の家具類の位置を変え始めた。舞台美術家も監修してかなり厳密に決められていた家具類を、ぽんぽんと動かしてしまっている。このような重大な変更を、スルッとやってしまうのが、この演出家のすごいところである。見ると、これまで均等に散っていた家具類の置き位置を、数カ所に集める形に変更しているようだ。僕は内心でガッツポーズした。だって、散っていた家具を数カ所に集める、というのは、地明かりだったものをサスっぽいものにするという僕の照明の変更と、方向性がピタリ一致しているではないか。僕のほうは、演出家が集めた家具群に合わせ、「サスっぽいもの」をますます「サスそのもの」に変えていく。

二幕の明かりが、ようやく、形になってきた。アンバーとブルーのポチもどうにか生かせそうだし、プロサスのナマのポチもよく効いている。二幕最後まで稽古を終え、翌日早い時間に通し稽古をすることになった。

10月16日
小屋入り5日目。本番二日前。
午前中は少しだけ手直しとデータ修正。未決定だった細かい段取りを少し稽古したあとに、通し稽古。照明もどうにか合わせることができた。

通し終了後、演出家が「一つ大きく迷っていることがある」という。なんと、二幕の途中で、緞帳をおろすシーンを作りたい、というのだ。緞帳は、そのままおろしたら家具類にぶつかるから、家具の位置を大きく変更しなければならない。そうなれば関連するサスは全部フォーカスやり直しである。っていうか、フォーカスを振るだけでは済まない、吊っているサスバトン自体を変更する必要があるものもいくつか出てくるだろう。しかし2サスは回路使い切り。2サスに何かを足すには、何かを引かなければならない。1サスも1回路しか空いていない。3サスは回路はあるが、位置的に前なので、サスっぽいものを吊るのには適さない。あと、照明の構成的に、緞帳がおりたらプロサスのナマのポチが使えなくなる。客席染めなどの効果も使えない。これはかなり痛い。

演出家が僕に尋ねる「岩城さん的に、緞帳おりるのは、どうですか?」。上記のように、大変きつい状況である。しかし、たしか「まあ、どうにかする」と答えたと思う。だってそれ以外に答えようが無いじゃんか。プロサスのナマのポチや客席染めの効果が使えなくなるということは説明した。

どちらかといえば、「緞帳をおろさないで頑張って作って、後でやっぱり緞帳をおろしたい」となるよりも、「緞帳をおろす前提で作って、やっぱりおろさないことにする」というほうが、楽である。緞帳をおろす前提で、家具の置き位置が大きく変更された。とりあえず、位置変更に合わせて、フォーカスを振ってみる。あまりよろしくない。あと、プロサスのナマのポチが使えなくなるのを、どうにかしたい。考える。考える。くじけそうになるが、涙が出てきそうになるが、こらえて、頑張って考える。

舞台を眺め、サスを見上げ、ふと気がついた「3サスの真ん中が大きく空いている。1サスの真ん中も、少し空いている」。うーん、あれをこっちに持ってきて、その代わりにこれを、などと色々考えている内に、ついに「解」が出た。

・1サスの「タンスサス」を2サスに移動する。
・1サスの「タンスサス」があった場所に「タンスPAR」を移動する。
・2サスの「上手中エリア」を1サスに移動する。
・3サスの中央に凸を6台吊り足し、67ポチとする。
・3サスの両端にあった67ポチ6台は、色を変えて31ポチとする。
・1サスの両端にあった31ポチ6台をナマにする。
・1サスの中央に凸を3台足し、上記と合わせ計9台をナマのポチとする。

これで、サス関係が解決し、プロサスのナマのポチを1サスに移動できたことになる。
吊り位置と回路のめどがついたところで、残り作業は翌日として、この日は退出。

10月17日
本番前日。
朝から、昨日吊り変えたサス関係やポチのフォーカス。
午後から、緞帳をおろす前提で二幕の稽古をする。結局、緞帳はおろすものの、開くことになった(引き割り緞帳なので昇降と開閉ができる)。二幕の途中の盛り上がるシーンで緞帳が下りてきて、降りる途中で開き、6間ぐらいの半開の状態で着地する、という演出が採用された。

緞帳が閉じることは無くなったので、プロサスのポチは生きている。同じものを1サスに作ったが、これは色を入れて手数を増やすべきである。何色にするか、数秒考えて決定。暖色にも寒色にも相性の良い、ラベンダー(#87)である。今一つ「ぼけて」いたいくつかのシーンに#87のポチを使用することで、明かりのバランスが大きく改善した。

あと一つ、クリアしなければならない課題がある。おりた緞帳は終盤の「火事」のシーンでいったん閉まり、すぐアップする。その際に、緞帳がアップしたときに「より火事っぽく」なっていると良い、と演出家が言ったのが引っかかっているのである。「火事っぽく」するには、あと一手、何か欲しい。「緞帳がアップした時」ということは、緞帳の外...と考える内に、下手フロントに、1回路(2台)だけ未使用があることに気づいた。これを既設客席に振って、炎色のポチにした。2台だけだが、効果はあるだろう。

夜、ゲネプロ。何とも不思議なことが起こった。ここまで、シーンごとに「ここはボーダー、ここは地明かり」などと、基本的なコンセプトは演出家のいいなりに作ってきた。ゲネプロでその明かりをつけてみたら、どうみても「自分の明かり」なのである。自分の明かりが「いつの間にか」出来上がってしまった。仕込み直後はあれほどダメだと思っていたのが、ついにこうして、完成の時を迎えた。

10月18日
本番当日。
午後から本番前の最後の稽古。僕が作った既設客席の炎色のポチの光の中に、役者二人が入ってきて着席する、という演出が加わった。演出家の要請で照明を作る→その照明を受けて新しい演出が加わるという、演出家と僕との、痛快な連携である。

既設客席の二階席、遠くの、オレンジの光の中に座る俳優二人は、ビニール幕ごしに、ぼけてぼんやりと、距離感が強調されて、実に遠くに見える。その姿はまるで、茶の間に座って遠くの大災害をテレビで見ている、私たちのようではないか。なんと効果的な演出だろう。

こうして、「あなた自身のためのレッスン」の初日が、無事に開いた。


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