つれづれなる日々

今月の日記に戻る
トップページに戻る

2004年2月の日々

寒い日は、温泉


02/29/2004(日)

若手稽古は、きょうはAB合同。といっても、3月中旬に公演がある若手自主企画に出演している人たちが欠席だったので、やれるシーンがあまりなかった。ラストシーンを練習しているのを見る。本公演では自分が出ているから、このシーンって、見たことがなくて、なかなか新鮮だった。自分の稽古は、「有機農業」と「かましましたね」。Bの弁護士とは何度もやってるんだけど、Aの弁護士とちゃんと稽古するのは、きょうがほぼ初めてだった。

咳が出るだけで熱もないので、たかをくくっていたのだが、もう1週間、のどの調子がおかしい。そろそろ復調しないと、次の公演が始まってしまう。ので、うがいをした。ていうか、苦しい苦しいって言ってないで、うがいしたりのどスプレー塗ったり、すればよかったのに、なんでいままで気がつかなかったんだろう。


02/28/2004(土)

主に一日家にいた。仕事をしながら、ミステリーチャンネルでエルキュール・ポワロを見ていたら、最後の決め手が、もう死んでいる被害者(右利き)になりすましてメモを取ったとき、犯人が左手で書いていた、だった。その人は、俳優という設定で、メモを取ったのはやりすぎだった、「俳優というのは、やりすぎるものですね」というのがオチになっていたんだけれど、左利きでしかも俳優だったら、他人の利き手にはけっこう敏感なんじゃないだろうか。こういうときばっか「左利き」ということを使わないでほしいなぁ。


02/27/2004(金)

きょうも、タタキ。すっぴんで頭もくしゃくしゃのまま帽子をかぶり、作業着で出掛ける。なんせ、家から徒歩5分の場所に劇団の作業場があるのである。

きょうの炊き出しは、きのうご飯を炊きすぎてしまったのでそれをチャーハンにするところは私が担当することにして、それ以外は新人3人にだいたいお願いする。そんな受け継いでいってもらうほどのノウハウがあるとも思わないんだけど、こういうふうに一緒にやりながらバトンタッチしていけるのは、確かに、いいね。

そしてタタキはきょうで終了! 「後は現場で」となった部分も、二、三なくはないんだけど、とにかく、終わってホッとした。

夜は、アゴラで、7月の旅公演のミーティング。


02/26/2004(木)

きょうも、タタキ。日曜からのどが痛いのだが、ここ2、3日、咳がとまらない。コンコン言いながら作業する。炊き出しは、きょうは私と新人2人で、カレー。

タタキ終了後、帰宅。食事をしてすぐ就寝。ほぼ朝まで。


02/25/2004(水)

『東京ノート』本公演(3月の、愛知県での公演)と若手公演と団祭り参加のあなんじゅぱす、3つの公演の合同のタタキ(舞台装置作成)がきょうから始まった。午前中は私は炊き出し係をやった。30人分の昼食の準備を2〜3人で。食器の数があまりないので、どんぶりにしようということになった。肉以外のものがいいというリクエストがあったそうで、タラ、鶏と野菜を煮込んでコンソメ、しょうゆで味つけし、ちょっととろみをつけた、中華丼風のものを作った。

午後は装置作成に合流し、若手『東京ノート』用の「作りつけベンチ」の作成。2つのパーツに分かれているんだけど、最初のは、舞台美術の至さんが、一緒に作って、やり方を見せてくれた。それで、2番めのは、至さんがいなくてもけっこうスラスラ作れた。ワークショップって、たぶん、こういうようなことなんじゃないだろうかと思った。

夜は、若手B稽古。来ていない人が多くてあまりできるシーンがなかった。私関連では、「家族退場」のあと「橋爪ら登場」の前までの、学芸員二人と弁護士のシーン。ここは、もうけっこう何度も稽古している。


02/24/2004(火)

『東京ノート』若手公演稽古(A)。でも私は、稽古なし。

久しぶりに、カイロの先生のところに行く。旅公演で1カ月あいだがあいてしまった。


02/23/2004(月)

出発前には小さなつぼみからかすかに香りがするだけだった梅が、いまは満開だ。

プレイボックスからいただいてきたStolenの戯曲を電車の中で読み始めたら、あっという間に降りる駅で驚いた。アゴラに、目黒第一中学校2年生の公演(総合学習の時間)を見にいって、その後も、夕方まで読んだ。オーストラリアにはこんな歴史があったのか。ぜんぜん知らなかった。

夜は、空間と舞台のワークショップの発表会があり、照明のお手伝いをしがてら、見せてもらった。


02/22/2004(日)

第1便6名で、帰国。宿舎が2カ所に分かれていて、もう一方はタクシーだったが、私たち4人のいるほうには、アーティスティックディレクターとプロデューサーの方がみずから車で迎えに来てくださった。しかも、朝の6時である。本当に本当に、何から何まで、ありがとうございました。

何人かの人に『東京ノート』と似ているとか言われた、Lost in Translationという映画が、飛行機でやっていたので、見てみた。うーん、ぜんぜん似ていない。私にとっては、『エマニエル夫人』と似た印象の映画だった。エッチなところはないんだけれど。

夜10時近くに、成田着。思ったほど寒くなかった。ただ、雨が降り出し、駅から家まで歩いてびしょぬれになった。荷物が多かったので傘がさせず、本などが濡れないようリュックを背負った上から上着を着たので、後ろ半身は大丈夫だったけど前半身がびしょびしょ。すぐに熱いシャワーを浴びる。


02/21/2004(土)

教えてくれる人があって、スタートレックグッズのある店を目指して、メルボルン中心部に行く。1軒は、フィギュアとか本とかまんべんなく置いてあって、扱っている番組も、日本のアニメ、Xファイル、シンプソンズ、バフィー、スターウォーズその他多岐に渡り、スタトレ物はそんなにたくさんなかった。気になる書籍は何冊かあったけど、なんだか値段がずいぶん高いので、これなら帰ってからAmazonで買っても同じかも、と書名だけ覚えておく。2軒めは、小さな店内のほぼ全域がポスター。端っこのほうに映画やテレビの台本も売っていて、スタートレックの物もいくつかあった。TNGのFirst Contactの台本を買う。はじめのところに、名前の読み方ガイドが載っているのが、おもしろかった。異星人の名前だからね。

路上にテーブルを出しているイタリア料理店でリゾットを食べた。おいしかったけどちょっとしょっぱかった。お店に『東京ノート』のポスターが貼ってあった。

2時から「日本の現代演劇について」というフォーラムがあって、平田オリザと、オーストラリアの演劇人2人が、そういう話をした。3時半までの予定だが、私は自分の準備があるので、もっと聞いていたかったけれど3時過ぎに抜けた。

4時開演。きょうも客席は、静かめ。と言っても、1場のわりと最初のほうから、ところどころ笑い声が起こっていた。マチネとソワレのあいだに、カフェの屋外のテーブルで友の写真を撮っていたら、「まだ写真撮ってる!」と言われた。さっきの公演を見てくださった方だと思う。公演の前とか後とかに、劇場内のカフェでだらだらできて、ここはホントにいい環境だ。

きょうはカフェで、タイカレー風(ココナツ風味でちょっとからい)の味つけの汁ビーフン、チキン入り、というようなもの(名前は忘れた)を食べた。日本語で、よかったですと話しかけてきた方があった。こちらの大学で日本文学を教えていらっしゃるとのこと。当日パンフレットにサインした。

8時開演で最後の公演。カーテンコールでは、客席のあちこちから舞台に向かってテープが投げられた。船が出航するときに投げるみたいなやつ。床に転がるテープを、拾うのかどうするのか、どうすることになっているのか、とっさのことでわからず、ありがとう、ありがとうという気持ちで笑顔で客席を見るばかりだった。

そしてすぐにバラシ。2時間弱で終わる。香港で1度やっているのでみんな手順に慣れてもいるし、作業スペースが広いので、ストレスなく、スピーディに作業が進んだ。終了すると、ロビーにビールやらワインやらが用意されていて、みんなでちょっと一息ついて話などもできて、ホスピタリティーってまさにこういうことのことをいうんだと思うけど、本当に、今回の、オーストラリアの劇場の皆さんのもてなし、歓待する態度には、いくら感謝しても感謝したりないような気持ちがする。


02/20/2004(金)

いえの人とゆっくりお昼ごはんを食べて、繁華なあたりを歩いてみてから、美術館に行った。LEESというオーストラリアの画家の描いた、赤茶けた背景に黒い服を着た女の人が両手を重ねて座っている絵に心ひかれ、じっと見ていると涙が出てきた。いままでの人生で、絵を見て涙が出たのは、2000年の『東京ノート』北米ツアーでボストン美術館でゴッホの、雨が降ってる窓みたいな絵を見たときと、今回と、2回だけだ。

劇場のカフェで、きょうはモルトハウスバーガーとアールグレイ。

8時開演で、3回目の公演。きょうのお客様は、割と静かだった。静かというか、きのうおとといが笑いすぎといえば笑いすぎなんで、きょうのほうが落ちついてやれたと思う。落ち着いてというか、全部の台詞がきちんと客席に聞こえているという安心感があった。

劇場スタッフの方が、市の中心部のあたりに飲みに行きましょうと誘ってくれて、何人かでぞろぞろと出掛ける。きょう日中は暑かったけどさすがに夜となると冷えてきて、でも屋外というかテラスで飲むのはいい気持ちだった。タニア(プレイボックスのスタッフ。服の趣味が私と似ていることもあって、たいへんなかよしになった)がスタートレックをよく知っていることが判明。「私、制服も持っているよ」と言ったら、「え、どの色?」というマニアックな反応だったのでたいへん嬉しかった。もっと前にスタトレの話をしていたらよかったなぁ。"Live Long and Prosper!"とバルカン流に挨拶して別れる。明日は2回公演があるので、早めに解散。


02/19/2004(木)

集合が5時半なので、昼間、ショッピングに行った。チャペルストリートというおしゃれな通りをずっと歩く。着るもの、バッグ、手芸材料、本など、いくら見ても見飽きない。お店の人に「旅行で来てるのか?」と聞かれては、公演案内のカードを渡して説明。

早めに劇場に行って、きょうもカフェでご飯を食べる。ほうれん草のサラダとツナメルト(これもホットサンド)、そしてジンジャービア。「ツバメ号」シリーズで子供たちがときどき飲んでる飲み物だ。ウィルキンソンのからいジンジャーエールと同じくらいしょうがの味が強くて、おいしい。

6時半から、「作者に聞く」みたいなフォーラムがあって、平田オリザが『東京ノート』の話をした。司会のメラーさんが「観客は、特に、話があっちこっち飛ぶのがおもしろかったようだ」と言っているのを聞いて、あぁあぁあぁ、きのうの笑いは、そういうことだったのか、と少し納得がいった。それと、すごい深刻な話をしてるのに表情がぜんぜんかわらないのが印象的だった、みたいな話が出て、こないだの『かもめ』でジャンカルロさんに「怒っているときに、笑っているように見えないようにしてほしい」と言われたことを思い出した。

8時開演で本番第2回。きょうのお客様もよく笑うお客様で、手をたたいて笑っている人もいた。ラストシーンの途中で嗚咽のような声が聞こえて、だれか泣いてるのかな、でも笑ってるのかも……と思っていたんだけど、カーテンコールのときに見たら、最前列の若い男性が顔をくしゃくしゃにして拍手していた。

夜、お家に招待してくださる方があって、関係者で集まった。プレイボックスのスタッフの人に、「メルボルンのお店の人は、帰っていくお客さんにSee you later.って言うよね。あれはお客さんのほうもSee you later.って言っていいの?」「お店に入るとよくHow are you?って声掛けてきて、私はだいたいいつもGood. How are you?って言うんだけど、見てるとどうも答えてない人もいるよね。あれは、どうするのがいいの?」などの疑問点を聞いてみた。

11時半過ぎに、トラムで帰った。トラムにも、だいぶ慣れてきた。


02/18/2004(水)

正午近く外に出ると、日差しがとにかくまぶしくて、目が痛いくらいだった。

2時開演でゲネ。テレビの取材が入っていて、ゲネの後、なんシーンか、抜きで撮影。同じシーンをカメラアングルを変えて何度か撮る。カメラアングルを変えて、というか、向かい合っている二人の、この人の表情をまず撮って、次の回はもう一人の表情をずっと撮って、という具合。ジョージ・タケイが自伝の中で、ウィリアム・シャトナーは相手役のクローズアップのとき気のない演技をしていたということを書いているけど、それってきっと、こういうときのことなんだなぁ、とか思った。

劇場ロビーのステキなカフェで食事。きのうは、Breakfast toastieというの(ホットサンド)と、かぼちゃのスープを食べた。きょうは、アボカド入りBLTとホットチョコレート。屋外のテーブルで、風に吹かれながら食べる。モルトハウスは、劇場が二つあって、カフェがあって、あと稽古場や、読み合わせに使える部屋もいくつかあって、制作、衣裳その他働く人の仕事場もあって、ほんとにすごくいい環境だ。自分たちでもこんな場所を作りたい、と思う。

8時開演で、メルボルン初日。なんだかものすごく笑うお客様だった。いままでの海外公演の場合、1場の途中で弁護士が人見知りについてコメントするところで最初の笑いが起こることが多かったんだけど、きょうのお客様は、1場の最初も最初、由美と好恵がまだ座る前の、マヨネーズの台詞から笑っていた。昨年9月に『ヤルタ会談』で行った山形県遊佐町の筒井米穀店倉庫(劇場)のお客様もそうだったけど、リラックスしてそれぞれ自分の好きなように反応している感じだった。

ロビーで初日乾杯。たくさんのお客様が残って、飲み物を飲みながら話をしていた。こないだオリザの電話取材のときに話した記者の人も来ていて、挨拶しに来てくれた。よかった、と言ってくださった年配の女性3人組に、「10年前の初演のときから同じ役をやっている」と言ったらビックリしていた。「いや、すごくよかったけどあの役にはちょっと若すぎるんじゃないかって話してたのよ」と言うので、「じゃぁ、あと10年くらい同じ役、やれますかね?」と聞いたら、「うん、少なくとも10年は大丈夫」とのこと。がんばろう。


02/17/2004(火)

建物が大きいうえに周りのスペースが広々としているせいだと思うんだけど、やたらに人間が小さく見えるような気がする。

朝から仕込みの続き。お昼には、プレイボックス(呼んでくださった団体)とモルトハウス(公演会場)のスタッフの方々と、自己紹介大会。その後、劇場のカフェでお昼をご馳走になり、午後は、もう少し仕込みの続き。そして、4時から場当たり。8時少し前に終了し、解散。今朝まで車で送っていただいていたので、はじめてトラム(路面電車)に乗る。車内にある改札の機械は、去年行ったローマのバスと同じ方式だった。そして、降りる人はひもを引っ張るとブザーが鳴るようになっていて、私が子供の頃のバスでそういうのがあったなぁと、なんだかなつかしかった。


02/16/2004(月)

早朝、メルボルンに到着。オーストラリアは検疫が厳しいそうで、到着前の機内でも、「迷ったら、申告しましょう。申告しても、検査後すぐに返してもらえる場合が多いです。申告内容に虚偽があった場合、罰金刑はおろか、懲役刑になる可能性もありますよ」という内容のビデオが流れていた。"Declare It Or Dump It" (申告するか、捨てましょう)というキャッチフレーズが印象的だった。

いったん宿舎に入り、休んで、4時から仕込み開始。夜になって空を見ると、まず明るい青白いシリウスが目に入り、その左上にオリオンの三ツ星、そこからななめ上方にむかってオリオンの飾り帯(スバルがある)がのびているのが見えた。日本で見ているオリオン座の、さかさまだ! 南半球なんだなぁ、ホントに。


02/15/2004(日)

香港最終日。「若手翻訳家座談会」の原稿がFAXで届いたので、荷造りをしながら、その校正もする。お昼は、案内してくれる友がいて、香港島においしい四川料理を食べに行った。

スイカみたいな、地下鉄やフェリーに乗れるカードを使っていた友が、払い戻すと言う。「払い戻しってなんて言うの?」と聞かれて、一緒に行って窓口の人に私が言ったのは、カードを差し出して、「マネー、バック、プリーズ」。それで問題なく払い戻し完了。

夕方の飛行機で、メルボルンに向かう。


02/14/2004(土)

部屋でだらだらと読書などして、1時の集合に間に合うように劇場入り。きょうはバレンタインデーで、聞くところによると、調光室や男子楽屋ら辺では、チョコレートが飛び交っていたらしい。

3時開演でマチネ。客席に入ったところで、やっぱりきょうも場内スタッフに、お客さんと思われて、なにやら言われる。きょうは、広東語(たぶん)で、わからなかったので、「ウィーアーアクターズ(私たちは俳優です)」と小声で説明した。なんか、最近、こういうの、全然平気になってきた。海外だからというわけでもなく。

ソワレの前に、いえの人とご飯を食べに行く。ここにしよう、と入った店が、日本語はおろか英語のメニューもなくて、漢字だからなんとかわかるだろうと思ったんだけど、「これ」と指差したら、それはないと言われ、そこから先が全然コミュニケーションがとれない。ちょっとだけ知ってる中国語で、「ワカリマセン」と言ったら、やっと、「聞いてもわからないのか。じゃぁ英語ならいいのか」「そう、そう」という話になり、一応英語で説明してもらったけどそれでもよくわからなくて、最後には、チキンってのはこれとこれがあるけどどっちにするんだ、と実物を見せてもらったりしてようやく注文した。ご飯のうえにチャーシューとチキンがのって、脇についていたのは菜の花だと思う。私はそういうやりとりも楽しくて、美味しくご飯をいただいたけれど、体調が思わしくなく熱のあるいえの人は、ちょっとつらかったようだった。

ソワレも無事終了し、2時間ほどで撤収。ホテルのレストランで、いえの人と夜ご飯。バレンタインだからか、テーブルの上には白とピンクのハート型の風船が置かれていた。そして隣の席はいかにもバレンタインデーなカップルで、ケーキを「あーん」って食べさせたりしていた。


02/13/2004(金)

集合時間が午後5時だったので、昼間、一人でショッピングに出掛ける。布地を買うならあそこがいいんじゃないかと地元の人に教えてもらったウェスタン・マーケットに、まず行く。建物が3階吹き抜けになっていて、その2階部分に布地屋が軒を並べている。見ていると、シルクか、コットンか、これはいい品物だ、中も見ていけ、とお店の人がどんどん声を掛けてきて、ゆっくり見てまわる感じではなく、それでも気に入った透ける系の布を少しだけ値切って買った。旅中に簡単なスカートでも作るつもりで、糸とか売っている店の場所を教えてもらってそれも買ったんだけど、結構いい値段の布だったし、家に帰ってからちゃんとミシンで、ブラウスか何かを作ろうかと、いまは思っている。

布地の他には、夏物のブラウスを2枚購入。外国に来ると自分の着られるサイズの服がごくごく普通に売り場に置いてある(日本だと、「大きいサイズ」コーナーに隔離されている)ので、嬉しくなって少し浮かれ気味になるのである。

公演二日め。昨日もお客さんの反応はよかったんだけれど、きょうはさらに「のっている」感じの客席だった。カーテンコールのときに客席を見ると、ハンカチで目を拭いている人の姿もあった。


02/12/2004(木)

香港、初日。午前中は、メールの返事を書いたり、原稿を書く・校正する系の仕事。2時から稽古。5時過ぎに終了。ふらふらとスーパーやコンビニ、本屋に。そして、7時半開演で香港の初日の公演。0場で、決まった段取りどおりに、お客様と同じドアから劇場内に入っていこうとしたら、場内係の人に「チケット、プリーズ」と声を掛けられ、日本側スタッフが、いやいやこの人たちはいいんだ、と慌てて通してくれた。


02/11/2004(水)

11時開始で、場当たり。昨日仕込みをしていた私たちが、きょうは衣裳を着て俳優として動いているのを見て、こちらの劇場のスタッフが、ちょっと驚いていた。

ダブリンやパリのときと同様、舞台の周りに回廊があって、そこも俳優が通っていくので、その段取りも決めていった。パリ公演のとき、0場(開場中)に回廊を通ろうとして、劇場スタッフに止められそうになった(「お客様、そちらはご遠慮ください」という感じで)ことがあったなぁ、と思い出す。

稽古終了からゲネプロ開始まで少し時間があったので、友とショッピング。花柄の半袖ブラウス(綿だと思っていたら、後で表示をよく見たら、綿麻混だった! ちょっと嬉しい)と、竜柄の長袖シャツを買う。2割引き、と言うので、それっていくらになるの?と聞くと、電卓に、いくら、と表示して見せてくれた。切りのいい数字まで負けてくれないか、とダメ元で言ってみたら、「ノー、ディスイズコンピュータ」と言われた。まぁね、POSで管理してるんだもんね。でも後から考えてみると、「バット、ユーアーヒューマン」とかもう一言言ってみてもよかったかな、などと思う。

ゲネは、問題なく、無事終了。


02/10/2004(火)

9時から劇場で仕込み。現地スタッフの方が何人も入ってくださって、中国語、英語、日本語の飛び交う現場。英語が通じる相手かどうかわからない、と思うからだと思うんだけど、こういうとき私は、主に日本語でコミュニケーションをとろうとする傾向がある。現在の状況についての共通認識があれば、「その荷物よりも、こっちのを先に(エレベーターで)あげたいから」とか「(ワイヤーでつった装置を、もっと)下げて、下げて」とか、日本語で言っても、こちらの態度とか身振りとかとあいまって、わかってもらえる場合が多かった。

仕込みは時間がタイトなので昼も夜もお弁当だったが、そのテイクアウトのお弁当が、おいしいし、あったかいスープやコーヒー、紅茶が付いてるし、しみじみと嬉しかった。仕込みの食事が美味しいと、ストレスが減る。

毎晩8時に香港島のビルから花火があがるという。見るならもうきょうしかチャンスがないので、仕込みをちょっと抜けて見に行った。フェリーが通る海を隔てて、向こうに香港島の高層ビルの夜景。時間になると、アナウンスが入り、ライトアップされたビルが、模様をかえたり、レーザー光線をばしばし飛ばしたり。ディズニーシーのイベントのようだった。10分ほどそうやってひっぱりにひっぱってから花火があがる。どーんという打ち上げ花火ではなかったけれど、あっちこっちのビルのてっぺんからピンクや黄色や白やみどりの花火の光がひゅるひゅる、ピカピカして、すごいなぁ、きれいだなぁ。でも、あれは危なくはないのだろうか。


02/09/2004(月)

晴天。久しぶりに、ゆっくり一日過ごす。

ホテルのエレベータに、splendid ideas(すばらしいアイディア)のpを線で消してbに書き直したポスターがあった。その下にミキサーの絵があったから、splendidblended(ミックスした)を掛けた駄洒落らしい。街で何か食べ物屋を探していたら、大きなビルの地下に向かう階段にgreat(偉大な)と書いた大看板があって、その単語の中の後ろ3文字、つまり、eatの部分が色が変えてあるのを見て、これは絶対eat(食べる)と掛けた駄洒落だからここに食べるところがあるはず、と行ってみたら、案の定、ハンバーガーとか丼物とか、いろいろな店が入っていた。駄洒落の好きな人って、どこにでもいるんだろうか。


02/08/2004(日)

朝4時に荷造りを終わり、お風呂に入ったりして、一睡もしないまま出発。飛行機は、けっこう揺れた。映画『ロボコン』をやっていた。途中からところどころ見た。イヤホンは苦手なので、英語と中国語の字幕の出ている無音の画面を見ていたのだが、試合場面が本物のロボコンの特徴をよくとらえていて楽しかった。ただ、中心となるチームが、だんだん高いハードルを越えるように、段階的に問題をクリアしていくのは、ちょっとちがうだろう、と思った。1回戦ですばらしい動きを見せたチームが、2回戦では一か八かの勝負に出て敗れるとか、ロボットがまったく作動しないとか、逆に次々難なく勝つとか、ロボコンを見ていて本当にすごいと思うのは、そういう容赦ないストーリー展開なのに。ただ、まぁ、それだと、主人公のいる物語にはならないだろうけれど。

香港は、雨模様で、高層ビルに霧がかかっていた。ホテルにチェックインし、荷解きをした後、少し眠る。夜は、大学の同窓生で香港にいる人たちと食事会。年代的に近い人たちが多かった。こういう先生がいたとか、おなじクラスのだれだれさんにこういうことがあったとか、20年も前のことなのに、話しているうちにいろいろと思い出してくるのがおもしろかった。そして、こうやって久しぶりに会って情報交換するから当然そうなるんだろうけれど、だれだれさんどうしてる? 亡くなりました、という話がいくつか出た。人生の中の、そういう時期になってきたということでもあると思う。同期で在学中一緒に演劇をやっていた友だちと、思いがけなく会えて、それが一番嬉しかった。


02/07/2004(土)

明日香港に出発なので、その前に終わらせておかなければならない仕事2件を、なんとか終わらせ、THE SHAMPOO HAT『みかん』を見に行く。16時半開演のシャンプーバージョン(出演:THE SHAMPOO HATの俳優たち)で、男たちのシャンプーワールドを堪能。20時からのコンディショナーバージョン(出演:客演陣)は、最初、シャンプーバージョンとのちがいばかりが気になってしまって、好きになれなかったけれど、次第次第に、シャンプーとはちがう匂い、手触りの、こちらの人たちの世界にも、やっぱり私は引き込まれていった。


02/06/2004(金)

お声を掛けていただき、戯曲の翻訳を手掛けている若手翻訳家の座談会に出席(シアターガイドの4月号に載るそうです)。もちろん、私が一番ぺーぺーなんだけど、いろいろと有意義なお話がうかがえたし、いま翻訳で困っていることについても私がいままで考えていなかったアプローチを示唆していただけたし、たいへん勉強になった。


02/05/2004(木)

本公演『東京ノート』、きょうは、通し稽古のみ。途中、笑いの発作が3度ほど起きて、死ぬかと思った。もっとまじめに演劇に取り組んでください、とおこられた。登場人物が一生に一度だけ経験していることと、俳優が毎回毎回経験していること――そういう2つのフェーズがあって、きょうはその後者的にものすごく可笑しい出来事が続発して、どうにもこうにもがまんできなくなってしまった。こういうとき、メソッド演技だったら大丈夫なんだろうか、すごく部分的に、この台詞だけメソッド演技で、みたいなことは、可能なんだろうか。などということを、考えた。


02/04/2004(水)

前はエク28を2本なんてへでもなかったんだけど、けさ、ちょっとアルコールが残っているような気がした。最近あんまり飲まないから、お酒に弱くなってきてるんだろうか。歳のせいかもしれない。

本公演『東京ノート』は、返し稽古ってことになるんだろうか、一通り、全シーンやった。

お正月用に奮発して大粒の丹波の豆を買って黒豆を煮たんだけど、なんだかんだで正月どこにも出掛けなかったので(実家とかに持っていこうと思っていた)、そのまま冷蔵庫に忘れられていて、こないだふと見たら白いふわふわした物がついていたんだけど、そのままにしていて、きょう意を決して出してきて捨てた。かつては砂糖水だったはずの液体部分が、粘度がついていて、スライム状ににゅーっと延びた。うわ。

周りに愛用者が多いので、5本指靴下なるものを、買ってみる。うーん。私の足の形とあわないというか、小指部分がすぐに脱げてきてしまう。色違いで3足まとめて買ったのは、早まったかもしれない。


02/03/2004(火)

旅公演に持っていく用に、文庫本2冊購入。でも、おもしろくてつい読み始めてしまった。

本公演『東京ノート』、通し稽古。終わって、「ニンニク屋」とか「世界のビールがある店」と呼ばれている店に、飲みに行く。今年になって初めてだった。ドイツの濃いビール、エク28を、久しぶりに飲んだ。


02/02/2004(月)

本公演『東京ノート』の稽古。きのうやれなかったところを一通り。


02/01/2004(日)

本公演のほうの『東京ノート』の稽古。0場(開演前)からやっていって、2場の途中まで。それから、明日来れない人がいるので、後半の、その人関連のところ。旅公演のミーティングもした。積み込みのこととか、荷物を車で運ぶかどうするかとか、具体的な話をしていると、ホントに後一週間で旅公演に出掛けるんだなぁという実感が湧いてきた。


今月の日記に戻る
トップページに戻る